雙葉での6年間はかけがえのない毎日でした。中学・高校という多くのことを吸収できる貴重な時期に、苦手なことからも逃げ出さず、皆で高め合い、学べる環境がいかに貴重であったかを実感し、静岡雙葉での生活に今でも感謝しております。雙葉での授業を通して英語や異国の文化に興味を持ち、大学在学中はアメリカとタイに2年間留学しました。多国籍の人と関わる中で視野も拡がり、そこで得た力や経験を生かしたいという強い思いから、日本航空に入社しました。客室乗務員として働く中でも常に誠実でいることを心がけ、雙葉の校訓を忘れたことはありません。雙葉には将来こんな大人になりたいと思わせてくださる先生方や、尊敬できる仲間で溢れています。6年間の学校生活で出会ったさまざまな方の在り方を目標とし、フライトではお客様に誠意と優しさをもって接し、安全で快適にお過ごしいただけるよう、日々仲間と切磋琢磨しております。
雙葉時代、吹奏楽部でトランペット三昧の日々でしたが、家業が染物屋だったので、美術大学に進学してその道に入りました。染物の制作はいわば孤独な作業であり吹奏楽とは対照的ですが、100名を超える部員で気持ちを合わせ合奏した爽快感が忘れられず、今も地元アマチュアオケで演奏をしています。現在は公立高校で美術工芸の講師もしていますが、先日中世の宗教画を鑑賞した折、生徒の反応が私の予想したものと違ったのを見て、私には雙葉での宗教の授業や行事を通してキリスト教の精神性が染み込んでいることを再認識しました。思春期の得難い経験の中でも「誰も見ていないと思っても神様はいつも見ていらっしゃる」という言葉は特に心に残っています。個展や催事の際に、今でも同級生が訪ねてきてくれるたび、共に雙葉で過ごした特別な6年間があったことをありがたく思っています。
私の人間性や価値観の多くは、雙葉学園での経験により培われたと思います。雙葉では、学術的な知識を学ぶ事は勿論、宗教行事を通して己と向き合う事、他者と向き合う事を学びます。校訓の「徳においては純真に義務においては堅実に」は私の座右の銘であり、私は、自分自身に誠実である事、好きでいられる自分である事を大切にしています。私がありのままの自分を認め、日々、より高みを目指す事ができるのは、雙葉の先生方が生徒一人一人のあるがままを受け入れ、可能性を信じ才能を伸ばして下さったからに他なりません。医師は昼夜関係なく勤労を求められ、医学の進歩に合わせ生涯研鑽を積む必要があり、大変な部分もあります。雙葉で学んだ堅実さや弱者・他者への奉仕の精神は、医師として働く上で精神的な支柱となっています。
雙葉で私が見つけたものは「人とのゆるやかな繋がり」です。人と関わることが苦手だった私が、卒業後も会いたい、頼りたいと思える方々に出会うことができました。在学中にビブリオバトルの大会に出場できたのも「やってみたら」と背中を押してくださった先生の言葉のおかげです。大学ではコロナを契機に『学生の貧困』が明るみになり、困窮する学生の話を聴き食料を配布したり、熱海土石流災害による被災者の方への協力を行ったりする中で、数えきれない人との出会いを得ました。途中で困難にも遭遇しましたが、この挑戦ができたのも雙葉で学んだ「助けを必要とする人に寄り添い、ささやかでも自分たちにできることを探し、実践する」という教えが根底にあったからこそだと感じます。雙葉で出会った先生や友人のように、目の前にいる生徒に真摯に向き合い、自分らしい繋がりを築いていきたいと思います。